University of Minnesota Human Rights Center


日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合州国政府との間の協定、条約第四号、一九九六年六月二八日



 日本国政府及びアメリカ合衆国政府(以下「両当事国政府」という。)は、

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する枠組みを設けることが、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間の緊密な協力を促進し、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の円滑なかつ効果的な運用に寄与することを認識し、

 このような枠組みを設けることが、国際連合平和維持活動及び人道的な国際救援活動において日本国の自衛隊及びアメリカ合衆国軍隊がそれぞれの役割を一層効率的に果たしていくことを促進し、国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与することを理解して、

 次のとおり協定した。

第一条

1 この協定において、「後方支援、物品又は役務」とは、後方支援において提供される物品又は役務をいう。

2 この協定は、共同訓練、国際連合平和維持活動又は人道的な国際救援活動に必要な後方支援、物品又は役務の日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における相互の提供に関する基本的な条件を定めることを目的とする。

3 この協定は、相互主義の原則に基づく後方支援、物品又は役務の提供のための枠組みについて定める。

4 この協定に基づいて提供される後方支援、物品又は役務の使用は、国際連合憲章と両立するものでなければならない。

5 この協定に基づくアメリカ合衆国軍隊による後方支援、物品又は役務の提供は、合衆国法典第十編第百三十八章により与えられた権 限に基づいて行われる。

6 この協定に基づいて行われる後方支援、物品又は役務の要請、提供、受領及び決済については、日本国の自衛隊及びアメリカ合衆国軍隊が実施する。

第二条

1 いずれか一方の当事国政府が、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間で実施する共同訓練のために必要な後方支援、物品又は役務の提供を他方の当事国政府に対して要請する場合には、当該他方の当事国政府は、その権 限の範囲内で、要請された後方支援、物品又は役務を提供することができる。

2 この条の規定に基づいて提供される後方支援、物品又は役務は、次に掲げる区分に係るものとする。

 食料、水、宿泊、輸送(空輸を含む。)、燃料・油脂・潤滑油、被服、通信、衛生業務、基地支援、保管、施設の利用、訓練業務、部品・構成品、修理・整備及び空港・港湾業務

 それぞれの区分に係る後方支援、物品又は役務については、付表において定める。

付表区分  

食料 食料、食事の提供、調理器具及びこれらに類するもの

水 水、給水、給水に必要な用具及びこれらに類するもの

宿泊 宿泊設備及び入浴設備の利用、寝具類並びにこれらに類するもの

輸送(空輸を含む。) 人又は物の輸送、輸送用資材及びこれらに類するもの

燃料・油脂・潤滑油 燃料、油脂及び潤滑油、給油、給油に必要な用具並びにこれらに類するもの

被服 被服、被服の補修及びこれらに類するもの

通信 通信設備の利用、通信機器及びこれらに類するもの

衛生業務 診療、衛生機具及びこれらに類するもの

基地支援 廃棄物の収集及び処理、洗濯、給電並びにこれらに類するもの

保管 倉庫又は冷蔵貯蔵室における一時的保管反びこれに類するもの

施設の利用 建物、訓練施設及び駐機場の一時的利用並びにこれらに類するもの

訓練業務 指導員の派遣、教育訓練用資材、訓練用消耗品及びこれらに類するもの

空港・港湾業務 航空機の離発着及び艦船の出入港に対する支援、積卸作業並びにこれらに類するもの

修理・整備 修理及び整備、修理及び整備用機器並びにこれらに類するもの

部品・構成品 軍用航空機、軍用車両及び軍用船舶の部品又は構成品並びにこれらに類するもの

3 2の規定については、弾薬の提供が含まれるものと解してはならない。

第三条

1 いずれか一方の当事国政府が、日本国の自衛隊又はアメリカ合衆国軍隊による国際連合平和維持活動又は人道的な国際救援活動の実施のために必要な後方支援、物品又は役務の提供を他方の当事国政府に対して要請する場合には、当該他方の当事国政府は、その権 限の範囲内で、要請された後方支援、物品又は役務を提供することができる。

2 前条の2及び3の規定は、この条の規定に基づく後方支援、物品又は役務の提供に適用する。

3 日本国の自衛隊が1の規定に基づいてアメリカ合衆国軍隊により後方支援、物品又は役務の提供を要請される場合には、日本国の自衛隊によるアメリカ合衆国軍隊に対する後方支援、物品又は役務の提供は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(千九百九十二年法律第七十九号)に従って行われるものと了解される。

第四条

1 この協定に基づく物品の提供に係る決済の手続は、次のとおりとする。

a 物品を受領した当事国政府(以下「受領当事国政府」という。)は、当該物品を提供した当事国政府(以下「提供当事国政府」という。)にとって満足のできる状態及び方法で当該物品を返還する。ただし、bの規定の適用を妨げるものではない。

b 提供された物品が消耗品である場合又は受領当事国政府が当該物品を提供当事国政府にとって満足のできる状態及び方法で返還することができない場合は、受領当事国政府は、同種、同等及び同量の物品を提供当事国政府にとって満足のできる状態及び方法で返還する。ただし、cの規定の適用を妨げるものではない。

c 受領当事国政府が提供された物品と同種、同等及び同量の物品を提供当事国政府にとって満足のできる状態及び方法で返還することができない場合は、受領当事国政府は、提供当事国政府の指定する通貨により償還する。

2 この協定に基づく役務の提供に係る決済については、提供当事国政府の指定する通貨により提供された役務を償還するか又は同種であ り、かつ、同等の価値を有する役務を提供することによって決済する。決済の方法については、当該役が提供される前に両当事国政府の間で合意する。

3 いずれの当事国政府も、この協定に基づいて提供される役務に対して内国消費税を課してはならない。

第五条

 前条の1c及び2の規定に従って償還される物品又は役務の価格は、第七条に規定する手続取極に定める関連規定に基づいて決定される。

第六条

 この協定に基づいて提供される後方支援、物品又は役務については、提供当事国政府の書面による事前の同意を得ないで、一時的であ れ又は永続的であれ、いかなる手段によっても受領当事国政府の部隊以外の者に移転してはならない。

第七条

 この協定に基づいて行われる後方支援、物品又は役務の要請、提供、受領及び決済の実施については、この協定に従属し、条件の補足的な細目及び手続であ ってこの協定を実施するためのものを定める手続取極にのみ従うものとする。手綾取極は、両当事国政府の権 限のある当局の間で締結される。

第八条

1 この協定のいかなる規定も、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に影響を及ぼすものではない。

2 両当事国政府は、この協定の実施に関し相互に緊密に協議する。

3 この協定及び手続取極の解釈又は適用に関するいかなる事項も、両当事国政府の間の協議によってのみ解決されるものとする。

第九条

1 この協定は、アメリカ合衆国政府が日本国政府から日本国がこの協定を承認した旨の書面による通告を受領した日の後百二十日目の日に効力を生ずる。この協定は、十年間効力を有するものとし、その後は、いずれか一方の当事国政府がそれぞれの十年の期間が満了する六箇月以上前に他方の当事国政府に対してこの協定を終了させる意思を書面により通告しない限り、順次それぞれ十年の期間、自動的に効力を延長されるものとする。

2 1の規定にかかわらず、各当事国政府は、他方の当事国政府に対して一年前に書面により通告することによって、いつでもこの協定を終了させることができる。

出典 


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