University of Minnesota Human Rights Center

非国際的武力紛争の犠牲者の保護に関し、一九四九年八月一二日のジュネーブ諸条約に追加される議定書 (第二追加議定書) (抄)、 1125 U.N.T.S. 609、

第一編 この議定書の範囲

第一条(事項的適用範囲)

1 この議定書は、一九四九年八月一二日のジュネーブ諸条約に共通の第三条を、その現行の適用条件を変更することなく発展させかつ補完するものであ って、「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関し、一九四九年八月一二日のジュネーブ協定諸条約に追加される議定書(第一議定書)」第一条約によって包含されない武力紛争で、かつ、締約国の領域内において、責任のあ る指揮の下に、持続的かつ共同軍事行為を実行し及びこの議定書を実施するのを可能ならしめる程度の支配をその領域の一部に対して行使する反乱軍又は他の組織的武装集団と、締約国の軍隊との間に生ずるすべての武力紛争に適用する。

2 この議定書は、暴動、単発的及び参散発的な暴力行為、並びに他の類似の性質を有する行為のような、武力紛争でない国内的な騒動及び緊張の事態には適用しない。

第二条(人的適用範囲)

1 この議定書は、第一条の定める武力紛争によって影響を受けるすべての人に対して、人種、皮膚の色、性、言語、宗教若しくは、信条、政治的意見その他の意見、国民的意見をその他の意見、国民的若しくは社会的出身、貧富、出生若しくは他の地位、又はその他の類似基準による不利な差別(以下「不利な差別」という。)をしないで、適用しなければならない。

2 武力紛争が終了した時は、武力紛争に関係する理由のために自由を略奪され又は自由を制限されたすべての者、及び、同じ理由のための武力紛争も自由を略奪された時は、武力紛争に家計する理由のために、自由を略奪され又は自由を制限される物は、その自由の略奪又は制限が終了するときまで、第五条及び第六条の保護を享有するものとする。

第三条(不干渉)

1 この議定書のいずれの規定も、すべての正当な手段によって、自国に法と秩序を維持し若しくは再確立し、又は、自国の国家的統一と領土保全を防衛する国家の主権 若しくは政府の責任に影響を及ぼす目的で、援用してはならない。

2 この議定書のいずれの規定も、その領域内で武力紛争が生じている締約国の武力紛争に、又は、その対内事項若しくは、対外事項に、いかなる理由であ れ、直接又は間接に干渉することを正当化するものとして、援用してならない。

第二編 人道的待遇

第四条(基本的保障)

1 敵対行為に直接参加せず又は参加することを止めた者は、すべて、その自由を制限されているかいないかを問わず、身体、名誉並びに信条及び宗教的儀式を尊重される権 利を有する。それらの者は、すべての場合において、いかなる不利な差別もしないで、人道的に待遇しなければならない。皆殺しを命令することは禁止する。

2 1の一般性を害することなく、1に規定する人々に対してなされる次の行為は、いかなる時にも、また、いかなる場所においても禁止されており、かつ、引き続き禁止されなければならない。

(a) それらの者の生命、健康及び肉体的又は精神的福利に対する暴行、特に、殺人、並びに、拷問、傷害又はいずれかの形態の肉体に加える罰のような虐待。

(b) 集団に対する罰

(c) 人質

(d) テロ行為

(e) 個人の威厳に対する侵害、特に、侮辱的で品位を傷つける取扱い、強かん、強制売いん及びあ らゆる形態のわいせつ行為

(f) あらゆる形態の奴隷状態及び奴隷取引

(g) 略奪

(h) (a)から(g)までのいずれかの行為を行う旨の威嚇

3 児童は、彼らが必要とする監護及び援助を与えられなければならず、また、特に、

(a) 児童は、その両親、又は、両親が居ない場合には児童の監護に責任を負う者の希望に沿って、教育(宗教的又は道徳的を含む。)を受けなければならない。

(b) 一時的に離散させられた家族との再会を容易にするため、すべての適当な措置がとられなければならない。

(c) 一五歳未満の児童は、軍隊又は武装集団に徴募してはならず、また、敵対行為に参加することを許してはならない。

(d) この条の規定が一五歳未満の児童に与える特別の保護は、それらの者が(e)の規定に関わらず敵対行為に直接参加して捕らえられた場合にも、それらの者に引き続き適用しなければならない。

(e) 必要な場合、また、可能なときはいつでも、児童の両親又は法律若しくは慣習により児童の監護について行われている地域から、その国の一層安全な地域へ一時的に児童を立ち退かせる措置、及び、児童の安全と福利について責任を負う者が随伴することを確保するための措置がとられなければならない。

第五条(自由を制限された者)

1 前四条の規定のほか、武力紛争に関連する理由で自由を奪われた者(抑留されているか拘禁されているかはを問わない。)については、次の規定を最低限尊重しなければならない。

(a) 傷者及び病者は、第七条に従って、待遇しなけれなならない。

(b)  この項に規定する者は、現地の文民たる住民と同一の程度まで、食料及び飲料水を提供されなければなららず、かつ、保険及び衛生に関する保障並びに気候の厳しさ及び武力紛争の危険に関する保護を与えなければならない。

(c) それらの者は、個人宛て又は集団宛ての救済を受領することを許されなければならない。

(d) それらの者は、自己の宗教を実践し、また、要請がありかつ適当な場合には、教戒師のような宗教上の任務を遂行する者から精神的援助を受けることを許されなければならない。

(e) それらの者は、労働に従事させられる場合には、現地の文民たる住民が享有するのと類似の労働条件及び保障の利益をうけてはならない。

2 1に規定する者の抑留又は拘禁ついて責任をを負う者は、また、それらの者に関する次の規定を、自己の能力の範囲内で、尊重しなければならない。

(a) 家族の男子と女子が一緒に収容されている場合を除くほか、女子は、男子の区画から分離した区画に収容され、かつ、女子の直接の監視の下に置かれなければならない。

(b) それらの者は、手紙書き及び葉書を送付し及び受領することを許るされなければならない、手紙及び葉書の数は、必要と認められるときは、権 限のある当局によって制限されることがある。

(c) 抑留及び拘禁の場所は、戦闘地帯に近接してい設けられてはならない。1に規定する者は、抑留又は拘禁されている場所が、特に武力紛争から生ずる危険にされされるに至ったときは、安全についての適切な条件で移転を実施しうるのならば、立ち退かせなければならない。

(d) それら者は、医療診断の利益を享要する。

(e) それらの者の肉体又は精神の健康及び、安全性は、不当な作為又は不作為によって危険にされされてはならない。したがって、この条に規定する者を当人の健康状態によって支持されない医療措置で、かつ類似の医療状態にあ る自由な人に適用される一般に認められた医療基準に合致しない医療措置に服せられることは、禁止する。

3 1の対象とされない者であっても、武力紛争に関連する理由のためにその自由が何らかの仕方で制限されている者は、第四条及びこの条の1(a)、(c)及び(d)、並びに2(b)に従って、人道的に待遇しなければならない。

4 自由を奪われた者を開放することに決定した場合には、そのような決定をした者がそれらの安全を確保するために必要な措置をとらなければならない。

第六条(刑事訴追)

1 この条は、武力紛争に関連する刑事犯罪の訴追及び処罰に適用する。

2 独立及び公平性についての基本的保障を与える裁判所が宣告する有罪判決に従う場合を除くほか、犯罪について有罪とされる者に、判決を言渡してはならず、また、それらの者に刑を執行してはならない。特に、

(a) 司法手続は、被告人が自己に対して申し立てられている犯罪の細目を遅滞なく通知させられることを規定していなければならず、また、裁判の前及び、その期間中すべての必要な防御のための権 利及び手段を被告人に与えなければならない。

(b) 何人も個別的刑事責任に基づく場合を除くほか、犯罪について有罪の判決を受けることはない。

(c) 何人も、犯罪の実行の時に法律に基づいて犯罪を構成していなかった作為又は不作為を理由として、有罪とされることはない。その犯罪の実行の時に適用されていた刑罰よりも重い刑罰を科せることはない。その犯罪の実行の後に、軽い刑罰を科す規定が法律によって定められた場合には、犯罪者は、その利益を受けるものとする。

(d) 犯罪で起訴された者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される。

(e) 犯罪で起訴された者は、自ら出席して裁判を受ける権利を有する。

(f) 何人も、自己に不利益な、提供又は有罪の自白を強制されることはない。

3 有罪の判決を受けた者は、判決の宣言の時に、司法上その他の救済措置並びに救済措置が行われる期限について助言されなければならない。

4 犯行の時に一八歳未満であった者に対しては、死刑を宣言してはならず、また妊婦又は幼児の母に対しては、死刑を執行してはならない。

5 敵対行為の終了の時には、権力を有する当局は、武力紛争に参加した者、又は、抑留されているか拘禁されているかを問わず、武力紛争に関連する理由のために自由を奪われた者に対して、できる限り広い赦免を与えるように努めなければならない。

第三編 傷者、病者及び難船者

第七条(保護及び看護)

1 すべての傷者、病者及び難船者は、それらの者が武力紛争に参加したかしないかを問わず、尊重かつ保護しなければならない。

2 傷者、病者及び難船者は、すべての場合において、人道的に待遇し、また実行可能な限り広くかつできる限り遅滞なしに、それらの者の状態が必要とする医療上の看護及び治療をうけなければならない。医療上の理由以外に基づいて、それらの者を差別してはならない。

第八条(検索) (略)

第九条(衛生要員及の保護)

1 衛生要員及び要員は、尊重かつ保護しなければならず、また、その任務遂行のためにすべての可能な援助を与えられなければならない。これらの者は、その人道的使命と両立しない任務を遂行するよう強制されてはならない。

2 衛生要員は、その任務を遂行する際に、医療上の理由に基づく場合を除くほか、いずれの者を優先するように要求されることはないない。

第一〇条(医療任務の一般的保護)

1 何人も、いかなる場合にも、受益者のいかんを問わず、医療倫理と合致した医療活動をおこなったことを理由に処罰してはならない。

2 医療活動に従事する者は、医療論理の規則若しくは傷者及び病者のために定められた他の規則又はこの議定書に反する行為を行い、若しくは、それらに反する作業を実施するように強制されず、また、それらの規則によって、要求される行為を差し控えるよう強制されない。

3 自己が看護している傷者及び病者について取得する情報に関して、医療活動に従事する者が負う職業上の義務は、国内法に従うことを条件として、尊重されなければならない。

4 医療活動に従事する者は、国内法に従うことを条件として、自己の看護の下にあ り又はかつて看護の下にあった傷者及び病者に関する情報を与えることを拒否したこと又は与えなかったことを理由に、いかなる仕方でも刑罰を科されることはない。

第一一条(衛生部隊及び衛生輸送手段の保護) (略)

第一二条(特殊標章)  (略)

第四編 文民たる住民

第一三条(文民たる住民の保護)

1 文民たる住民及び個々の文民は、軍事行動から生ずる危険に対して一般的保護を享有する。この保護を実効的なものにするために、次の規則が、すべての場合において、遵守されなければならない。

2 文民たる住民全体及び個々の文民は、攻撃に対象としてはならない。文民たる住民の間に恐怖を拡めることその主たる目的とする暴力行為又は暴力による威嚇は、禁止する。

3 文民は、敵対行為に直接参加しない限りかつその期間は、本編により与えられる保護を享有する。

第一四条(文民たる住民の生存に不可欠な物の保護) (略)

第一五条(危険な威嚇を内蔵する工作物及び施設の保護) (略)

第一六条(文化財及び礼拝所の保護) (略)

第一七条(文民の強制的移動の禁止) (略)

第一八条(救済団体及び救済活動) (略)

第五編 最終規定 (略)

出典 「ベーシック条約集」 第二版


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