欧州審議議会加盟国であるこの条約の署名政府は、
一九四八年一二月一〇日に国際連合総会が宣言した世界人権宣言を考慮し、
この宣言が、その中で宣言された権利の普遍的かつ実効的な承認及び遵守を確保することを目的としていることを考慮し、
欧州審議会の目的が加盟国間のより強い統一の達成であること、及び、その目的を追求する方法の一つが人権 及び基本的自由の維持及び一層の実現であることを考慮し、
世界における正義及び平和の基礎であり、かつ、一方で実効的な政治的民主主義により、他方ではそれが依存している人権 の共通の理解及び遵守によって最もよく維持されているこれらの基本的自由に対する深い新年を改めて認識し、
志を同じくし、かつ政治的伝統、理想、自由及び法の支配についての共通の遺産を有するヨーロッパ諸国の政府として、世界人権 宣言中に述べられている権利のの若干のものを集団的に実施するための最初の措置をとることを決意して、
次のとおり協定した。
第一条(人権を尊重する義務)
締約国は、その管轄内にあ
るすべての者に対し、この条約の第一節に定義する権利及び自由を保障する。
第一節 権利及び自由
第二条(生命に対する権利)
1 すべての者の生命に対する権利は、法律によって保護される、何人も、故意にその生命を奪われない。ただし、法律で死刑を定める犯罪について有罪の判決の後に裁判所の刑の言い渡しを執行する場合は、この限りでない。
2 生命の略奪は、それが次の目的のために絶対に必要な、力の行使の結果であるときは、本条に違反して行われたものとみなされない。
(a) 不法な暴力から人を守るため
(b) 合法的な逮捕を行い又は合法的に抑留した者の逃亡を防ぐため
(c) 暴力又は反乱を鎮圧するために合法的にとって行為のため
第三条(拷問の禁止)
何人も、拷問又は非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰を受けない。
第四条(奴隷の状態及び強制労働の禁止)
1 何人も、奴隷の状態又は奴隷状態に置かれない。
2 何人も、強制労働に服することを要求されない。
3 この条の適用上、「強制労働」には、次のものが含まれない。
(a) この条約の第五条の規定に基づく抑留の通常の過程又はその抑留を条件付で免除されているときに要求される作業
(b) 軍事的性質の役務又は、良心的兵役拒否が認められている国における良心的兵役拒否の場合に、義務的軍役任務のかわりに要求される任務
(c) 社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される任務
(d) 市民としての通常の義務とされている作業又は任務
第五条(自由及び安全についての権利)
1 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、次の場合において、かつ、法律で定める手続に基づく場合を除くほか、その自由を奪われない。
(a) 権原のある裁判所による有罪判決の後の人の合法的な抑留
(b) 裁判所の合法的な命令に従わないための又は法律で定めるいずれかの義務の履行を確保するための人の合法的な逮捕又は抑留
(c) 犯罪を行ったとする合理的な疑いに基づき権原のある法的機関に連れて行くために行う又は犯罪の実行若しくは犯罪実行後の逃亡を防ぐために必要だと合理的に考えられる場合に行う人の合法的な逮捕又は抑留
(d) 教育上の監督のための合法的な命令による未成年の抑留又は権原のある法的機関に連れて行くための未成年の合法的な抑留
(e) 伝染病の蔓延を防止するための人の合法的な抑留並びに精神的異常者、アルコール中毒者若しくは麻薬中毒者又は浮浪者の合法的な抑留
(f) 不正規に入国するの防ぐための人の合法的な逮捕若しくは抑留又は退去強制若しくは犯罪人引渡しのために手続きが取られている人の合法的な逮捕若しくは抑留
2 逮捕される者は、速やかに自己の理解する言語で、逮捕の理由及び自己に対する被疑事実を告げられる。
3 この条の1(c)に規定に基づいて逮捕又は抑留された者は、裁判官又は司法権 を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権
利又は裁判までの釈放される権利を有する。釈放に当たっては、裁判所への出頭が保障されることを条件とすることができる。
4 逮捕又は拘留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを迅速に決定するように及び、その抑留が合法的でない場合には、その釈放を命ずるように、手続きをとる権
利を有する。
5 この条の規定に違反して逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。
第六条(公正な裁判を受ける権利)
1 すべての者は、その民事上の権利及び義務の決定又は刑事上の罪の決定のため、法律で設置された、独立の、かつ、公平な裁判所による妥当な期間内に公正な公開審理を受ける権
利を有する。判決は、公開で言い渡される。ただし、報道機関及び公衆に対しては、民主社会における道徳、公の秩序もしくは国の安全のため、また、少年の利益若しくは当事者の私生活の保護ため必要な場合において又はその公開が司法の利益をがいすることなく特別な状況において裁判所が真に必要であ
ると認められる限度で、裁判の全部又は一部を公開していないことができる。
2 刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される。
3 刑事上の罪に問われているすべての者は、少なくとも次の権利を有する。
(a) 速やかにその理解する言語でかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。
(b) 防御の準備のために充分な時間及び便益を与えられること。
(c) 直接に又自ら前出する弁護人を通じて、防御すること。弁護人に対する充分な支払手段を有しないときは、司法の利益のために必要な場合には無料で弁護人ふされること。
(d) 自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。
(e) 裁判所において使用される言語を理解し又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助をうけること。
第七条(法律なくして処罰なし)
1 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を警戒しなかった作為又は不作為を理由として有罪とされることはない。何人も、犯罪が行われた時に刑罰よりも思い刑罰を科されない。
2 この条は、文明諸国の認める法の一般原則より実行の時に犯罪とされていた作為又は不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものではない。
第八条(私生活及び家庭生活の尊重についての権利)
1 すべての者は、その私的及び家庭生活、住居及び通信の権利を有する。
2 この権利の行使については、法律の基づき、かつ国の安全、公共の安全若しくは国の経済的福利のため、また、無秩序若しくは犯罪防止のため、健康若しくは道徳の保護のため、又は他の者の権
利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる公の機関による干渉もあ ってはならない。
第九条(思想、良心及び宗教の自由)
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由について権利をゆうする。この権利には、自己の宗教又は信念を変更する自由並びに、単独では又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、教導、行事及び儀式によってその宗教の又は信念を表明する自由を含む。
2 宗教又は信念を表明する。自由については、法律で定める制限であって公共の安全のため又は公の秩序、健康若しくは道徳の保護のために民主的社会において必要なもののみを課す。
第一〇条(表現の自由)
1 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、公の機関による干渉を受けることなく、かつ国境とかかわりなく、かつ、意見を持つ自由並びに情報及び考えを受け及び伝えるテレビ又は映画の諸企業を許可制を要求することを妨げるものではない。
2 1の自由の行使については、義務及び責任を伴い、法律によって定められた手続き、条件、制限又は刑罰であ って、国の安全、領土の保全若しくは公共の安全のため、無秩序若しくは道徳の保護のため、他の者の信用若しくは権
利の保護のため、秘密に受けた情報の暴露を防止するため、又は、司法機関の権威及び公平さを維持するため民主的社会において必要なものを課することがdけいる。
第一一条(集会及び結社の自由)
1 すべての者は、平和的な集会の自由及び結社の自由についての権利を有する。この権 利には、自己の利益の保護のために労働組合を結成し及びこれに加入する権利を含む。
2 1の権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全のため、無秩序若しくは犯罪防止のため、健康若しくは道徳の保護のため、又は他の者の権
利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課してはならない。この条の規定は、国の軍隊、警察又は行政期間の構成員による1の権
利の行使に対して合法的な制限を課することを妨げるものではない。
第一二条(婚姻についての権利)
婚姻することができる年齢の男女は、権利の行使を規制する国内法に従って婚姻をしかつ家庭を形成する権 利を有する。
第一三条〈効果及び結社の自由)
この条約に定める権利及び自由を侵害された者は、公的資格で行動するものよりその侵害が行われた場合にも、国の機関の前において効果的な救済措置を受ける。
第一四条(差別の禁止)
この条約に定める権利及び自由の享受は、性、人種、皮膚の色、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民若しくは社会的出身、少数民族への所属、財産、出生若しくはたの地位等によるいかなる差別もなしに、保障される。
第一五条(緊急時における離脱)
1 戦争その他の国民の生存を脅かす公の緊急事態の場合には、いずれの締約国も、事態の緊急性が真に必要とする限度において、この条約に基づく義務を離脱する措置をとることができる。ただし、その措置は、当該締約国が国際法に基づき負う他の義務に抵触してはならない。
2 1の規定は、第二条(合法的な戦闘行為から生ずる死亡の場合を除く。)第三条、第四条1及び第七条の規定からのいかなる離脱の措置をとる権 利を行使する締約国は、とった措置及びその理由を覆う州審議会事務局長にその旨通知する。
3 離脱の措置をとる権利を行使する締約国は、とった措置及びその理由を欧州審議会事務局長に十分に通知する。締約国はまた、その措置が終了し、かつ、条約の諸規定が再び完全に履行されているとき、欧州審議会事務局長にその旨通知する。
第一六条(外国人の政治活動に対する通知)
第一〇条、第一一条及び一四条中のいかなる規定も、締約国が外国人の政治活動に対して制限を課することが妨げるものとみなされない。
第一七条〈権利bフ乱用の禁止)
この条約のいかなる規定も、国、集団又は個人がこの条約において認められる権利及び自由を破壊し若しくはこの条約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権
利を有することを意味することができない。
第一八条(権利誓約事由の使用に対する制限)
権利及び自由についてこの条約が認める制限は、それを定めた目的以外のいかなる目的のためにも適用してはならない。
第二節 ヨーロッパ人権裁判所
第一九条(裁判所の設置)
この条約及び条約の議定書において締約国が行った約束の遵守を確保するために、ヨーロッパ人権 裁判所(以下「裁判所」)を設立する。裁判所は、常設の機関として機能する。
第二〇条(裁判官の数)
裁判所は、締約国の数と同数の裁判官で構成される。
第二一条(就任の基準)
1 裁判官は、徳望が高く、かつ、高等の司法間に似んぜられるのに必要な資格を有するもの又は、有能な名のあ る法律家とする。
2 裁判官は、個人の資格で裁判官になる。
3 裁判官は、その任期中、裁判官の独立、公平性又は、専任職としての必要性と両立しないいかなる活動にも従事してはならない。この項の適用から生ずるすべての問題は。裁判所が決定する。
第二二条(裁判官の選挙)
1 裁判官は、議員総会によって、各締約国について当該締約国により指名される三名の候補者の名簿から投じられた投票の多数により選出される。
2 新しい締約国の加入の場合及び偶然の空席を満たすために同一の手続きが取られる。
第二三条(任期)
1 裁判官は、六年の任期で選出される。裁判官は、再任されることができる。ただし、第一回の選挙において選出された裁判官の半数の任期は三年で終了する。
2 最初の三年の期間で任期が、できる限り、三年ごとに更新されることを確保するために、議員総会は、いずれかの次の選挙を行う前に、選出される一又は二以上の裁判官の任期を九年を肥えず年を下回らない範囲で六年以外の期間とすることを決定することができる。
3 裁判官ののち半数の任期が、できる限り、三年ごとに更新されることを確保するために、議員総会は、いずれかの次の選挙を行う前に、選出される一又は二以上の裁判官の任期を九年越えず三年を下回らない範囲で六年以上の期間とするこを決定することができる。
4 二以上の任期が含まれ、かつ、議員総会が3を適用する場合には、任期の割当は、当該の選挙の完了後直ちに欧州審議会事務総長がくじ引きによって行う。
5 任期がまだ終了していない裁判官の後任者として選出される裁判官は、前任者の残任期期間中存在するものとする。
6 裁判官の任期は、裁判官が七〇歳に達する時に終了する。
7 裁判官は、後任者と代わるまで存在するものとする、ただし、裁判官は、既に審理中の事件は引き続き取り扱わなければならない。
第二四条(解任)
いかなる裁判官も、他の裁判官が三分の二の多数決により当該裁判官は必要とされる条件を満たさなくなったと決定するのでない限り、職務から解任されることははない。
第二五条(書記局及び法務次官)
裁判所は、書記局を置き。書記局の機能及び組織は、裁判所規則で定める。裁判所は、法務事務官が補佐する。
第二六条(裁判所の全員法廷)
裁判所の全員法廷は、次のことを定める。
(a) 三年の任期で、裁判所長及び一又は二名の裁判所長及び裁判所次長は再任することができる。
(b) 期間を定めて構成される小法廷を設置すること。
(c) 各小法廷の裁判長を選任すること。小法廷の裁判長は、再任されることができる。
(d) 裁判所規則を採択すること。並びに、
(e) 書記局長及び一又は二名以上の書記事務次長を選任すること。
第二七条(委員会、小法廷及び大法廷)
1 裁判所は、提訴される事件を審理するために、三人の裁判官で構成される委員会、七人の裁判官で構成される小法廷及び一七人の裁判官で構成される大法廷を置く。
2 関係当事国のために選出された裁判官は、小法廷及び大法廷の職員の職権による裁判官として出席するものとし、関係当事国のために選出された裁判官がいないか又は出席できない場合には、当該国が裁判官の資格で出席するよう選定したものが小法廷及び大法廷の職権
による裁判官として出席する。
3 大法廷はまた、裁判所長、小法廷の裁判長及び裁判所規則の従って選任される他の裁判官っを含める。事件が第四三乗に基づいて大法廷に付託される場合には、判決を行った小法廷の裁判官は、小法廷の裁判長及び関係当事国のために出席した裁判官を除き、大法廷に出席してはならない。
第二八条(委員会による不受理の宣言)
委員会は、全員一致の投票により、第三四条に基づいて付託される個人の申立を、さらに審理するまでもなく決定できる場合には、受理できないと宣言し又は総件名簿から削除することができる。この決定は、終結とする。
第二九乗(小法廷による受理可能性及び本条に関する決定)
1 第二八条に基づく決定が行われない場合には、小法廷は、第三四条に基づいて付託される個人の申し立ての受理可能性及び翻案について決定する。
2 小法廷は、第三三乗に基づいて付託される国家間の申し立ての受理可能性及び本案について決定する。
3 受理可能性に関する決定は、裁判所が例外的な場合に別段の決定をするものでない限り、別個に行うものとする。
第三〇条(大法廷に対する管轄権の移管)
小法廷に継続する事件が条件又はその議定書の解釈に影響を与えている重大な問題を生じさせている場合又は小法廷での問題の決定が裁判所が以前に行った判決と一致しない結果をもたらす可能性のあ
る場合には、小法廷は、判決を行う前のいずれの時でも、大法廷のために管轄権を移管することができる。ただし、事件の当事者の一がこれに反した場合は、この限りでない。
第三一乗(大法廷の権限)
(a) 第三三条又は第34条に基づいて付託される申立について、小法廷が第三〇条に基づいて管轄権 を移管した場合又は事件が第四三条に基づいて大法廷に付託された場合に、決定を行うこと、並びに、
(b) 第四七条に基づいて付託される勧告的意見の要請についての真理をすること。
第三二条(裁判所の管轄権)
1 裁判所の管轄は、第三三乗、第三四条及びその議定書の解釈及び適用に関するすべての事項に及ぶ。
2 裁判所が管轄権を有するかどうかについて争いがある場合には、裁判所が決定する。
第三三乗(国家間の事件)
いずれの締約国も、他の締約国による条約及びその議定書の規定の違反を裁判所に付託することができる。
第三四条(個人の申立)
裁判所は、締約国の一つによる条約又は議定書に定める権利の侵害の被害者であると主張する自然人、非政府団体又は集団かの申立を受理することができる。締約国は、この権
利の効果的な行使を妨げないことを約束する。
第三五乗(受理可能の基準)
1 裁判所は、一般的に認められた国際法の原則に従ってすべての国内的な救済処置が尽くされた後で、かつ、最終的な決定がなされた日から六箇月の期間内にのみ、事実を取り扱うことができる。
2 裁判所は、第三四条に従って付託される個人の申立で次のものを行ってはならない。
(1) 匿名のもの、又は、
(2) 裁判所が既に審理したか、又は既に他の国際的調査若しくは解決の手に付託された事実と実質的に同一であ って、かつ、いかなる新しい関連資料も含んでいないもの
3 裁判所は、第三四条に基づいて付託される個人の申立で条約又は議定書の規定と両立しないか、明白に根拠不十分か申立権 の乱用と考えるものを受理することができないと宣言する。
裁判所は、この条に基づいて受理できないと考えるいかなる申立も却下する。裁判所は、手続きのいずれの段階でもこの却下を行うことができる。
第三六条(第三者の参加)
1 小法廷及び大法廷でのすべての事件において、自国の国民が申立人となっている締約国は、書面の陳述を提出し及び口頭審理に参加する権 利を有する。
2 裁判所長は、司法の適正な運営のために、裁判手続の当事者ではない締約国は申立人ではない関係者に書面の陳述を提出し又は口頭審理に参加するよう招請することができる。
第三七乗〈審理の削除)
1 裁判所は、事情が次の結論に導く場合には、手続きのいずれの段階においても、申立を総件名簿から削除することができる。
(a) 申立人が自己の継続を望んでいない、又は、
(b) 事案が解決された、又は
(c) 裁判所によって確認されたその他の理由により、引き続き申立の審理を行うことが正当化できない。ただし、裁判所は、条約及び、議定書に定義された人権 の尊重にために必要な場合には、引き続き申立の審理を行う。
2 裁判所は、事情により正当であると考える場合には、申立を総件名簿に再び記載することを決定することができる。
第三八乗(事件の審理及び友好的解決の手続き)
1 裁判所は、申立を受理できると宣言した場合には、次のことを行う。
(a) 当事者の代理人と共に、事件の審理を行うこと、並びに、必要があれば調査を行う。この調査を効果的に行うために、関係国は、すべての必要な便宜を提供する。
(b) 条約及び議定書に定義する人権 の尊重を基礎とする事案の有効的解決を確保するために、裁判所を関係当事者にい利用させる。
2 1(b)に基づいて行われる手続きは、非公開とする。
第三九乗(友好関係の認定)
友好的解決が成立する場合には、裁判所は、事務及び到達した解決の簡潔な記述にとどめる決定を行うことにより、名簿から事件を削除する。
第40条(公開の口頭審理及び文書の入手)
1 口頭審理は、裁判所が例外的な場合に別段の決定をする場合を除き、公開とする。
2 書記長に寄託された文書は、裁判所長が別段の決定をする場合を除き、公衆が入手できるようにする。
第四一乗(公正な満足)
裁判所が条約又は議定書の違反を認定し、かつ、当該締約国の国内法が部分的賠償がなされることしか認められない場合には、裁判所は、必要な場合、被害当事者に公正な満足を与えなければならない。
第四二乗(小法廷の判決)
小法廷の判決は、第44畳の規定に従って終結となる。
第四三乗(大法廷への付託)
1 事件おいずれかの当事者も、例外的な事件の場合には、小法廷の判決の日から三箇月の期間内に当該事件が大法廷に付託されるよう請求することができる。
2 大法廷の五人裁判官で構成される審査部会は、当該の事件が条約若しくはその議定書の解釈若しくは適用に影響する重大な問題又は一般的重要性を有する重大な問題を喚起する場合には、その請求を受理する。
3 審査部会が請求を受理する場合には、大法廷は、当該の事件を判決により決定しなければならない。
第44条(最終判決)
1 大法廷の判決は、終結とする。
2 小法廷の判決は、次の場合に終結となる。
(a) 当事者が事件を大法廷に付託するよう請求する意思のないことを宣言する場合は、又は
(b) 判決の日の後三箇月経過し、その間に事件の大法廷への付託が請求されていなかった場合、又は
(c) 大法廷の審査部会が第四三乗に基づく付託の請求を却下する場合
3 最終判決は、公表される。
第四五乗(判決及び決定の理由)
1 判決及び申立を受理できるか受理できないかについて宣言する決定には、理由を府さなければならない。
2 判決がその全部一部について裁判官の全員一致の意見を表明していないときは、いずれの裁判所の終結判決に従うことを約束する。
第四六乗(判決の拘束力及び執行)
1 締約国は、国が当事者であるいかなる事件においても、裁判所の終結判決に従うことを約束する。
2 裁判所の終結判決は、閣僚委員会に送付され、閣僚委員会は、その執行を監視する。
第四七条(勧告的意見)
1 裁判所は、閣僚委員会の要請により、条約及び議定書の解釈に関する法律問題について勧告的意見を与えることができる。
2 この意見は、条約の第一節及び議定書に定義する権利及び自由の内容若しくは範囲に関するいかなる問題も、又は、裁判所若しくは閣僚委員会が、条約に基づいて開始される手続きの結果検討しなければならなくなるその他のいかなる問題も、取り扱ってはならない。
3 裁判所の勧告的意見を要請する閣僚委員会の決定は、同委員会に出席する資格のあ る代表者の三分の二の多数の投票を必要とする。
第四八条(裁判所の勧告に関する管轄権)
裁判所は、閣僚委員会が付託した勧告的意見の要請が、第四七条に定義する権限内にあ るかどうかをけっていする。
第四九乗(勧告的意見)
1 裁判所の勧告的意見には、理由を付さなければならない。
2 勧告的意見がその全部又は一部について裁判官の全員一致の意見を表明していないときには、いずれの裁判官も、別個の意見を表明する権 利を有する。
3 裁判所の勧告的意見は、官僚委員会に通知される。
第五〇乗(裁判所の経費)
裁判所の経費は、欧州審議会が負担する。
第五一条(裁判官の特権及び免除)
裁判官は、その任務の遂行中は、欧州審議会規定の第四〇条及びそれに基づいて作成される協定に定める特権 及び免除を受ける権利を有する。
第三節 雑則
第五二乗(事務総長による照会)
いずれの締約国も、欧州審議会事務局長の要請のある場合には、自国の国内法がこの条約の諸規定の効果的な実施を確保する方法について説明を与えなければならない。
第五三乗(既存の人権の保障)
この条約のいかなる規定も、いずれかの締約国の法律又は当該締約国が締約国となっているいずれかの他の協定に基づいて保障されることのあ る人権及び基本的自由を制限し又はそれから逸脱するものではない。
第五四条(閣僚委員会の権限)
この条約のいかなる規定も、欧州審議会規程が閣僚委員会に与えた権限を害するものではない。
第五五乗(他の紛争解決手段の排除)
締約国は、この条約の解釈又は適用から生じる紛争を請願によってこの条約で定める解決手段意外のものに付託するために、締約国間に有効な条約又は宣言を利用しないことを約束する。ただし、特別の合意があ
る場合は、この限りでない。
第五六乗(領域適用)
1 いずれの国も、批准のとき又はその後のいずれのときでも、欧州審議会事務局総長に充てた通告によって、自国が国際関係についいて責任を有する地域の全部又は一部についてこの条約の4に従ってこの条約を適用することを宣言する。
2 条約は、欧州審議会事務局総長がこの通告を受領した後三〇日から通告の中で指定する地域に適用される。
3 この条約の規定は、地方的必要に妥当な考慮を払って、これらの地域に適用される。
4 この条の1に基づいて宣言を行ったいずれの国も、宣言後のいずれのときでも、宣言が関係する一又は二以上の地域のために、この条約の第三四条に定める自然人、非政府団体又は集団からの請願を受理すること裁判所の権
限を宣言することができる。
第五七乗(留保)
1 いずれの国も、この条約に署名するとき又は批准書を寄託するときに、その領域でそのときに有効ないずれかの法律がこの条約の特定の規定と抵触する限りで、その規定いついて留保をふすことができる。一般的性格留保は、この条のもとではない。
2 この条に基づいて付されるいかなる留保も、関係する法律の簡潔な記述を含むものとする。
第五八乗(廃棄)
1 締約国は、自国が締約国となった日から5年経過した後、かつ、欧州審議会事務総長に宛てた通告に含まれる六箇月の予告の後のみ、この条約を廃棄することができる。欧州審議会事務総長は、これを他の締約国に通知するものとする。
2 1の廃棄は、この条約に基づく締約国の義務の違反を構成する可能性がある行為であ って廃棄が効力を生ずる日の前に締約国が行っていたいかなるものについても、関係締約国を当該の義務から免除する効果を持つものではない。
3 欧州審議会の加盟国でなくなるいずれの締約国も、同一の条件でこの条約の締約国でなくなる。
4 条約は、1から3までの規定に基づいて、第五六条によってその適用が宣言されたいずれの地域についても廃棄することができる。
第五九条(署名及び批准)
1 この条約は、欧州審議会加盟国の署名のために開放しておく。この条約は、批准されなければならない。批准書は、欧州審議会事務総長に寄託する。
2 この条約は、一〇の批准書が寄託された後に効力を生ずる。
3 条約は、その後に批准する、署名国については、批准書の寄託の日に効力を生ずる。
4 欧州審議会事務総長は、すべての欧州審議会加盟国に、条約の効力発生、条約を批准した締約国名並びにその後にすべて行われるすべての批准書の寄託について、通知する。
出典 「ベーシック条約集」 第2版 東信堂